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『魏志倭人伝の考古学』の感想たまたま同じ時期に読んでいた『邪馬台国と大和朝廷』と『魏志倭人伝の考古学』とを比べると、後者の影響下に入門書として書かれたのが前者かなと思いました。前者には魏志倭人伝の訓読文が巻末に載っていて、後者には原文と、訳文がついているという似ていてなおかつ補うような構成でもあります。項目別に淡々と事実が述べられていて、とても抑制が聞いています。文章から若い人かと思っていたのですが、すでに故人でした。好きなことを一生やってきた純粋さの結果なのかも。こちらは、文庫ではありますが、参考文献リストがずらずらと並ぶ本です。 14ページのタヌキ・キツネは本土から壱岐までしかおらず、対馬・朝鮮半島にはいないというのがあって、意外でした。安倍晴明の母親がキツネという伝説とか、稲荷信仰と陰陽道の関係という風に陰陽道とキツネは関係があって、陰陽道は中国から朝鮮半島を経由して日本に来たのだから、キツネと朝鮮半島も関係があるのだと思っていました。確かに、晴明の母については、後に作られたフィクションでしょうし、稲荷神社についても、陰陽師の下で働く御師が布教活動をしたのがたまたま稲荷だった程度の関係なのかも知れません。 36ページ付近にも、陰陽道と関連しそうな話が出てきました。安倍晴明の星型の五芒星マークに対して、ライバル 蘆屋道満の横線4と縦線5の九字マークが海に潜る海女の人に使われているというのを以前読んだことがありましたが、ここでは星型や、竜の爪をかたどった模様を鉢巻にして魔よけにしたという風にでてきました。竜の爪って? 49ページあたりも、もぐり漁関連の話なのですが、寒い海に潜ると、耳の近くの骨が隆起するので、それが考古学的な証拠として残るというのは驚きでした。外耳道骨腫という用語でした。なおかつ、女性がもぐる地域と男性がもぐる地域の差について、ケネディという人の研究が紹介してあったのですが、海水温度から説明してあるのもすごい発見だなあと思いました。 57ページには、鯨ににているのですが、2倍角表示で「黒京」(げい)という字が出てきます。顔に刺青するデザインを地域比較しているのですが、畿内にはそういう模様の描かれた土器などが出てこないと書いてあります。地図を見ると岡山と名古屋にはいっぱいあるのですが。畿内の外でも、兵庫県にはありません。兵庫県にも海の人はいたでしょうに。やはり、播磨の古墳は破壊しつくされているのかなあ? 142ページには竹の矢柄(竹箭)が、北九州説に合い、大和説には合わないというのがでてきました。普通は忘れてしまうような、とても細かいことですよね。 179ページに占いの話で太占(ふとまに)というのが出てくるのですが、高校の同級生に太上(ふとがみ)君という子がいました。太上で検索しても、中国の古典が出てくるばかりという気がします。文字的にも似ているし、「ふとまに」が「ふとがみ」に変わったというような事はないのでしょうか? 国産み神話は、淡路島あたりで、イザナギ、イザナミが占うのはふとまにでした。ふとがみくんは西播磨の人だったのですが。電話帳で見ると全国で10件ほどしか登録されておらず、兵庫県相生市、龍野市、芦屋市、大阪府茨木市などでした。 240ページには、縄文系と弥生系の人相の違いについて書いてありました。
243ページに現代も呪術の時代だから、省庁再編のスタートの日が休日なのに大安吉日を選んであるという風になっています。それ以前に、7日周期で生活していることが迷信だと僕は思うのですが、それについては気にならない様です。 関連ページ
作成 2004/6/9 - 更新 2004/06/09
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