中田力『天才は冬に生まれる』が昨日届いて、眠る前に読みました。数人の天才のエピソードを紹介した後に、脳の渦理論というのにすこし言及しているだけでした。そうか、ファンクショナルMRIの人かとTVで見た記憶が、少しよみがえりましたが、脳の話はごく一部で、数人では統計的な説得力は無いし、一体なに? と思ってしまいました。例として出てくる天才は本当に有名な人ばかり
なのでエピソードも、ほとんどが既知の話であるわけです。
ハイゼンベルグがナチスの原爆開発に協力したとして非難されているあたりについての名誉回復はされていなくて、この本ではハイゼンベルグは理論物理学者であって電池の構造さえ説明できないくらい工学的知識がなくて、ナチスの原爆開発計画が頓挫したのはそのせいだということになっていました。
この前見たTV番組では、唯一ドイツに残ったハイゼンベルグは、ナチスに実現の困難さを報告し開発を断念させることに成功した後で、ボーアと接触し、協調して両方の陣営に原爆開発を思いとどまらせるべく画策していたという話でした。しかし、ハイゼンベルグがドイツに残ったこと自体で
二人の関係に亀裂が生じていて、ハイゼンベルグの裏切り行為とみなされて身を危険にさらしかねない行為の意図は正しく伝わることが無く、ドイツが原爆を作ろうとしているという情報のみがアメリカに伝わる結果になってしまったということでした。
この本で、天才として名前だけ登場するものの生年月日が省略されているガウス1777年4月30日。オイラーは、1707年4月15日
ということで、すでに破綻しているとも言えます。チューリングもホモだったことだけ言及があります。
ラマヌジャンの逸話については、藤原正彦「天才の栄光と挫折」で読んだ時の方が余程詳しかった気がします。前提としてのイギリスによる過酷なインド統治の話の中に出てきたベンチクとかダイヤーとかは知りませんでしたが。
ちなみに、「天才の栄光と挫折」ではニュートン、関孝和(?)、ガロワ(1811年10月25日)、ハミルトン(1805年8月3日)、コワレフスカヤ(1850年1月15日)、チューリング(1912年6月23日)、ワイルズ(1953年4月11日)が出てきます。
細かいことを言い出すと、ガリレオ(1564年2月15日)の場合 グレゴリオ暦導入が最も早かったイタリアですが、それでも1582年以前ですから、グレゴリオ暦に直すと2月25日に相当ということですね。
コペルニクス(1473年2月19日)もグレゴリオ暦に直して考えないと。
という様なニュースがありましたが、コペルニクスについても言及するなかで進化論にもふれていました。進化論のダーウィン(1809年2月12日)
やウォーレス(1823年1月8日)を思い出すなら、延長上に、無意識の存在を強調したフロイト(1856年5月6日)もいもずる式に並ぶのが普通という気がします。