「都市再生」を問う -建築無制限時代の到来- 五十嵐敬喜 小川明雄 著 岩波新書832 ISBN4-00-430832-1 c0236 \740E
2003年問題はどうなるのだろうとか思って買ったのですが、怖いことが書いてありました。全体の空室率が増加しても、再開発でできた新しい建物については、国の民間都市開発推進機構が債務保証しているので、銀行やゼネコンは平気みたいです。ただし、あおりを食らった周辺の小さなビルは空き室増加に耐えられず新たな不良債権と化し、乱開発によって都市景観が悪化することで周辺の不動産価値も下がりと全体としては弊害のほうが多く、超高層ビルを建てる会社(例によって不良債権の塊という場合が多い)だけに利益が上がる政策ということの様です。
国が債務保証したり、民間プロジェクトをすべて国家プロジェクト並みに優遇して周辺住民を立ち退かせたりする政策せいで、超高層ビルが乱立しているのだとは知りませんでした。無駄なものをゼネコンの要望通りに作りたいだけ作らせて、こまったら税金投入して、それでも駄目だったらアメリカのハゲタカファンドに買い叩かれてお仕舞い。というこれまでのパターンの忠実で大規模な繰り返しがちょっとだけ形と場所を変えて続いていただけみたいです。ロウソクの炎が消える直前一瞬だけ明るくバチバチと燃えるという様な表現がありますが、今年、2003年問題はそういう状況なのですね。
そもそも経済戦略会議が悪いという感じで10人の名前があげてありました。特に森ビル社長などパーティーに小泉首相をはじめ歴代首相を呼びつけ思い通りに政府を操る悪の親玉みたいな扱いになっています。1月ほど前だったか、TVで、広い部屋一面に東京の巨大で精密な模型を作ってそれを眺めて次の構想を練っている森ビル社長の姿が写って、ゲストが「こういうことは普通一国の首相なり支配者なりがやることだよね。」みたいな感想を言っていましたが、そういうことなのかも。
さらにTVの話に逸れますが、六本木1丁目の再開発地域のシンボルキャラクターをデザインした村上隆という人の番組でも、森ビル社長は出てきて、その時には、村上隆という人の、才能もオリジナリティーも無いと自覚しているから、食っていくためにはどんな仕事でも引き受けるという開き直りがいやな感じだったのですが、この2人の組み合わせは、暴君信長と、あらゆるチャンスに貪欲に飛びつかざるをえなかった秀吉みたいな関係なのでしょうか。
最近問題になっている大学の独立法人化なんかも、文部科学省の官僚による支配が最悪だと盛んに言われていますが、大学の3割は東京にあるわけで、実は、大学を採算割れに追い込んで、東京から大学を追い出し、そこに、高層マンションを建てようという様な計画が背後に動いているのかも。
閑静な住宅地の真ん中に高層マンションが立つ様なことが起こるのは地方分権が進んでいないせいだみたいなことも書いてあったので、民間都市開発推進機構による債務保証のせいで税金が投入され始めると、それに腹を立てて地方が反乱を起こすとかいう未来が、唯一の希望でしょうか?

JAPIC
初耳だったのですが、{これまでの重点プロジェクトとしてJAPICが提言し、実現したと誇っているのは、東京湾アクアライン、横浜のみなとみらい21、関西空港、幕張新都心などで、いずれも膨大な赤字を抱えている}という風にして出てきました。